ぼくらの第二十四話「物語」(最終回)

口伝なのだから、物語としていちばん正しいカタチなのかもしれません。

勝てば自分の地球は守られる、死んでも母さんに会える――大人たちが遠巻きを決め込む中、ウシロは今まで共に戦ってきた15人のために、家族のために、30時間に及ぶ死闘の末勝利しました。

アイツはあのときどんな想いだったのか、どう奮い立たせたのか、どう恐怖を乗り越えたのか――その思い出と戦いを見守る人たちといっしょだったから、ウシロは孤独ではありませんでした。
ただ、いちばん理解して欲しい連中にとって、単なる一過性の消耗戦にしか映らないであろうことが腹立たしいのです。兵士は使い捨て――戦争なんていつもそう。

雲をつかむような大義名分なんて知ったことではないから、人は守りたいもののためにだけ戦うのです。

それでも、この地球は15人によって守られたことを忘れ、わがままな欲と気ままな自由が横行してゆく……当たり前のように。
ならせめて、知っている者が語り継いでいかなければ。

物語る人がいる限り「ものは象られる」のでしょう。
あの戦いも、あの裏切りも、あの焦燥も、そして、あの幸せも――

ぼくらの第二十三話「雪景色」

政府筋が強気の作戦を続けてきたのは、バックに政財界を操る右翼の大物がいたせいでした。
確証もないSFめいた話で経済を停滞させるわけにはいかない。怪獣殲滅と同時に焼け野原の復興を目指す、それが彼らの思惑でした。

これまで戦ってきたパイロットの子どもたちを”ガキ”と呼び捨て、生かしておいてもいいことはないと言い放つ。
避難が不十分な場所での作戦開始にもなんの躊躇もない。

真の敵は、ここにいました。

けれど、迂闊な行動で地球を窮地に追い込んだ責任は、自分たち15人でとらなければならない。

マチはウシロから預かったピストルで兄を撃ち殺し、ジアースの主導権を握ります。
椅子取りゲーム――すっかり数は減ってしまったけれど――を念じ、次なるパイロットとして戦いに臨むマチ。

敵もジアースもひとまとめの絨毯爆撃という惨い仕打ちの炎の中で、マチは勝ちました。今までの罪の贖罪には到底及ばないと言いつつも。

最後のパイロットはウシロ。
彼が関さんに頭を下げてまで望んだ、最後の、パイロット。

雨あられのような爆弾に替わって、静かに降り始めた雪。
その上にゆっくり倒れこむマチ。
本当は、自分の地球で死にたかったよ、お兄ちゃん。

次回、最終回。

ぼくらの第二十二話「道程」

美しき村に育つ不信の種。
全編ウシロの独白による今回、カンジとの関係もよく分かりました。

父と息子、母と娘は同性であるがゆえ、癒着も反発も強いものです。
理想を追い求め夢を着実にかなえていく父への憧れと、その父にいつか捨てられてしまうのではないかという不安が、日々ウシロを苛むのでした。
それでなくとも思春期真っ只中、根拠のないプライドばかりが肥大していきますしね。

父は自分をどう思っているのだろう――ウシロの出奔はそれを見極めるため、父のいちばん大事なもの=カナを盾にとり、父を試そうとした感があります。

帰宅を決心したのは、実母との対面、それまで間近に見てきた様々な仲間たちの親子関係に心を揺さぶられたのと、コエムシの誘惑にのってしまったら、最後まで逃げの人生だと気付いたからではないでしょうか。

父のためにカナを守りたい。
夕焼けの草むらを走る、やわらかい骨をもったしなやかな体が、あと少しで永遠に失われてしまうのか……。

ぼくらの第二十一話「真相」

なんだかもう感想入れてる余裕がありません。ストーリー追うので精一杯。
それでも今回の”真相”は個人的にうーむ;です。

教授の立場を利用し、認知研で得た情報を横流ししていた母を許せないカンジは、最後の願いとして、タモツに母の殺害を依頼します。
おりしも、狙いすましたように認知研ビル”沖天楼”前に現れた敵。
避難勧告に逆らい、間近でデータ収集を続ける母親の執着は、研究のためだけなのか。
そんな母に、タモツは「あんたの息子の戦いを最後までいっしょに見届けましょうや」と告げます。それに対し
「もちろん、私は最初からそのつもりでした」
と答える母の真意は、息子の契約を解きたい、ただそこにありました。

おそらくは、そのためならどんな汚い手を使っても、あくどい契約を結んでもかまわないと、母は思っていたのかもしれません。

戦いの目的を見つけられないカンジに「何か守りたいものを思い浮かべろ」とアドバイスするウシロ。
苦笑しながらも「母さんの研究は一流だ。それに沖天楼にはまだ秘密がある」と突撃するカンジ。

倒したはずの敵の再起動。
それは、ジアースの秘密を解くために戦いを沖天楼にコピーすることで、地球産業に利用しようとする「ジアース・プログラム」の存在でした。
「何故か、ジアースの研究を始めると自動的にプログラムが発動してしまう」とマチが言う通り、”その地球”のエネルギーを吸い尽くしてしまう、悪魔のプログラム。

更にそのエネルギーは、勝ち残り、延命を与えられた代償として、支配者たちへ送られてしまうのでした。

けれど、支配者の目論見は本当にただそれだけなの?
それじゃまるで、人間と単細胞生物くらいのレベル格差じゃないですか。つか、もっと効率のいいやり方がいくらでもあるだろうに。
淘汰に勝ち残った方が、エネルギーも上等ってんですかね。

目的は違えど、母子は互いを守りあい、息子は死亡。母は最初から勝ち目の無かったプログラム計画に挫折。
その様子を見たコエムシは、ウシロに次の地球への引継ぎ役を提示します。残りの敵は2体。パイロットはウシロと関のふたり。ならば不足分はカナに契約させればいいと。

「父さん? 順だけど。明日、カナを連れて帰ります」

お兄ちゃんが死ぬのはイヤと泣き崩れるカナを前に、ウシロはある決心をした様子。
残る敵を倒し、次の地球での引き継ぎを終え、支配者にいいようにエネルギーを消費される未来に、ウシロはどう対峙するのでしょうか。

ぼくらの第二十話「宿命」

並行地球同士の潰し合いをプロデュースした”支配者”に、ジアースの思念波プログラムでアクセスしたカンジ。
しかし、五感を通さず直接脳に送られた情報は、認知研の技術をもってしても解析不能なようです。


そこへ全てを話すため、関さんたちに伴われたマチが登場。
スクリーンコネクタを脳幹端子に接続するあたり、サイバーパンク萌えのあたしはもう滂沱の涙です。そうか、あんたはそんなとこからやって来たのね。


シロウとヨウコの兄妹を含む自由研究会の子どもたちは、かれらの地球で言葉巧みに”ゲーム”と称された戦いに契約させられます(ヨウコは補欠扱い)。パイロット契約の内容は周知の通りですが、新たに「戦いの引継ぎ」という事実が提示されました。

それは――

1.まず15人が契約する。
2.契約を薦めた者(本編ではココペリでした)が”ゲーム”のお手本を示す(ここで1体の敵が消滅し、残り14体となる)。
3.”ゲーム”が潰し合う戦いだという真実を突きつけられ、逃れられないパイロットたちは死闘を続ける。
4.14人のパイロットが全勝(すなわち全員死亡)した場合、生き残った1人は「戦いの引継ぎ」として次の地球へ向かい、契約を成立させゲームの手本を示した後、自分の地球へ生還できる。

――というもの。

兄シロウは生き延びるため形振り構わぬ態度をとり、その努力(?)が認められ最後のパイロットとして勝ち残った後、死亡せずにコエムシの姿に変身。妹ヨウコとともにゲームの演出を担って、次々と並行地球を渡り歩いて来た……以上マチの告白が終わります。


いつぞやコエムシが「使えるのはウシロか」とつぶやいていたのは、この「引継ぎ役」をウシロにさせようということ。
性格の悪さが自分と似ている、妹だけゲームからはずすのは可哀想……ウシロとカナの関係は、コエムシ(=シロウ)とマチ(=ヨウコ)にそっくりでした。

カンジの罵倒を受けせせら笑うコエムシは、お返しだと言わんばかりにカンジ母の行動を暴露します。
彼女は認知研に入ってくる極秘情報を横流しし、結果的に最悪の状況を招いた張本人だったのでした。

日本政府が(おそらく認知研からの情報で用意された)無人兵器使用許可を全世界に問う中、次のパイロットにカンジが選ばれてしまいます。

「もう他者の都合に騙されない」と叫ぶカンジ。
騙す騙される以前に、こんな不毛な理不尽な戦いに巻き込まれたことに怒るのが妥当だけれど、ここまできた子どもたちの心理は「せめて仲間の死をムダにしないよう」に収斂されています。




泣いてもわめいても状況は変わらない。
どんなに嫌でも事態の矢面に立たねばならない。
ならば、そのための尤もらしい理屈を捻出しなければならない。

戦いに限らず、人は誰しもそうやって人生を生きていくのかもしれない――これだってただの理屈に過ぎないですけどね。

ぼくらの第十九話「母」

なにはともあれ、ウシロの憂いをおびた美少年ぶりだけで良しとしましょう、今回。

極道の抗争は分かるような分からないようなだけど、ポニテの田中さんが16歳で若頭と結婚なさっていたのはオドロキでした。

敵と刺し違えて死んだ父、更なる追っ手から逃れるため自衛官の道を選んだ母。結果として一粒種の赤ん坊は姉夫婦に預けられ、義理の妹とともに現在に至る――淡々と語られる真実に涙するウシロ。

彼が妹いじめに走ったのは、理由のない、けれど確信に似た予感に苛まれ続けていたからだったのね。それを知った今、ウシロがカナに話しかける口調は以前よりずっと穏やかなのでした。

ジアースの出現ではからずも再会を果たした母と息子。
その時間はあまりに短く、お互い名乗りあうことも叶わなかったけれど、宙ぶらりんだった己がやっとこの世に軟着陸できた実感が、ウシロにはあると信じたいです。

なのに、もうあとウシロとカナちゃんと、カンジと関さんしかパイロットは残っていないの。



次回、マチによって語られるこの戦いの理由を、なにがなんでも知らなければなりません。

ぼくらの第十八話「現実」

「ジアースがこの地球の奥深く眠っていた何かを目覚めさせてしまった――私にはそうとしか思えないのです」

娘がまもなくパイロットとして搭乗すると察したコモ父は、自分の議員生命を賭けてジアースの真実を国民に伝えようとします。
しかしそれを良しとしない(と思われている)勢力により、コモ父は射殺。助けようとした田中さんまでもが犠牲になってしまいました。

枝分かれし過ぎた世界の剪定が目的。
ロボットの動力はパイロットの命。
戦って勝てばパイロットは死ぬ。
負ければ地球そのものが消える。

真実だけど、こんな突飛なこと誰が真実だと思ってくれるの?
アウェーの世界の住人は、自分たちのロボットに味方していると行動で示しました。
でも、この世界の人々は、負ければ地球が滅亡すると聞いて尚、恐ろしいまでの太平楽で私利私欲の追求をやめない――何故か?

コモ父が記者会見でいみじくも語った

「地球の奥深く眠っていた何か」

それがあると知っているからこその余裕なのか。
絶対者の存在が提示されながら、未知のエネルギーをコントロールすることに執着する展開が理解できません。
勝てない相手は置いといて、卑近な現実にしがみつこうってこと?

それとも、はなっから信じてないのか。

来週はマフラーを巻いたウシロの、家族の肖像です。

ぼくらの第十七話「情愛」

母子の名乗りをあげられないふたり。
つらく当たりながらも、妹を心配せずにはいられない兄。
息子を被験者にしておきながら、おざなりな台詞をはく母。
いつまでも小さな娘でしかない少女の頭をなでる父。
いっときの気の迷いと弁明する父と、カエルの子はカエルと揶揄される当の娘。

情愛のカタチは様々だけど、こういうときでなければおそらくあり得なかった、アンコとカンジの突然の関係が、いちばん痛かった今回。

あてにならない両親に代わって、自分を守ってくれる存在を求めていただけかもしれないけれど、力をもった人間は同時に守る義務を負う――そう諭され、両親の絆を修復するきっかけを与え、負けて死にたくないとがむしゃらに突っ込んでいったアンコ。

カンジが一緒にいてくれたから、戦えたよ。

親の限界を知ることで、少女は一歩大人になり、恋のきざはしに手をかけて、死んでいきました。
そんな彼女を抱きしめ嗚咽するカンジは、一瞬の幻を見ます。

それは、とても勝ち目のない、支配者。
あるいは、絶対者。

「しょせん、オマエは支配者の狗だろうが!」

そうコエムシを罵ったカンジはすでに、この世界での戦いのアンカーに指名されているのでした。

彼に至るまでの戦いが、単なる消耗戦にならないよう。
今はただ祈るだけです。

ぼくらの第十六話「正体」

野党代議士であるコモ父は、ジアースレポートの成立及び政府(&癒着企業)との関連を、国会答弁という形で追求します。
一方、TVの人気キャスターであるアンコ父は、契約に至る経緯や現在の心境を子どもたちにインタビューし国民へアピールすることを提案しますが、生死に関する部分は無用の混乱を招くと却下されてしまいます。
ウシロ母である田中さんと認知研のカンジ母も揃い、保護者同士の意思確認を行うものの、内情や思惑はみな微妙に食い違っているように思われました。

愛人と別れ自宅に帰ってくるようになったキリエ父と、新たに職を見つけ人が変わったように明るくなった母をみて、キリエは戦う拠り所を得ます。彼ほど聡明な人間ならば、取って付けたような家族修復をそらぞらしく感じるかと思いましたが、淡白に見えた彼本人こそ、実は凡庸な日常を切望していたのかもしれません。

キリエはこれまででいちばん上手く、軽やで且つ効率的に戦いを進め、あっけないほどの勝利を手にするのでした。
そして、パイロットとしての役割を果たした彼は、契約していない者とその正体を暴きます。

それは、マチ。
前回、敵の自滅で契約解除になるかという淡い希望を、即論理的に否定したことへの疑問。
そも、あの臨海学校で、みんなを運命の洞窟へ誘ったのも彼女だった――

彼女の正体。
この世界で15人のパイロットを契約させるため、別の世界からやってきたココペリの仲間。
コエムシの、妹。

これ以上の追求を封じるため、ジアースレポートは想像の産物だと発表する与党、コモの自宅へ投げ込まれる火炎瓶。
政治的な駆け引きも企業の美味しいとこ取りも、子どもたちが勝ってこその危うい条件の上に成立してると、彼らは認識しているのか。
あるいは、現場の人間の知らない、遥かに高度な意図が存在するのか。

次のパイロットはアンコ。
メモを見て、一瞬凍りつく父。

アニメ版の真実、もうひとつの結末へ向かって、さらにギアが入れられていきます。

ぼくらの第十五話「自滅」

誰がどう自滅なのだとハラハラしながら観始めたのに、なんだか突然任侠モノに;
田中さんと若頭イチローの一粒種・ウシロ保護を親分に依頼され、地下室にやってきたサカキバラタモツ(多分榊原保)。

「自分のシマは自分で守るか――さすが、ぼっちゃん♪」

なんだかいつもと毛色が違ってやりづらい感じです。
その一方、戦う意義を見つけられないままのキリエは、家庭崩壊に絶望し自殺未遂を図った母にも現実感がもてません。
スッカラカンみたいなキリエより、できれば羊羹1本食いするウシロが見たかったです(それもどーかと)。

そんなとき渋谷に現れた敵。
召集された皆を前に、キリエは自分は戦わないと宣言します。

「ぼくらの世界は、相手の地球を滅ぼしてまでも継続に足る存在なんだろうか」

騒然とするコックピット内。
しかし、突如敵は自らの装甲を破壊しコアを引きちぎり、握りつぶして自滅してしまいます。まるでキリエの意思にシンクロしたかのように。

不戦勝でパイロットのお役御免とはいかない契約、キリエの動向は今後の戦いの行方を左右していくのでしょうか。
ウシロに利用価値アリと踏んでいるコエムシにとっても、それは困ったことになるのでは。

とりあえず来週はこれまでのおさらいです。

「えーと、最初に死んだの誰だっけ?」

つか、オマエが死んでしまえ、石田彰#(だから違うって; 石田さんごめんなさい)